ポケットバトル オークvsエルフのホビージャパン翻訳の誤訳・翻訳ミス

ポケット・バトル:オークVS.エルフ (Pocket Battles Orcs vs. Elves)

ポケット・バトル:オークVS.エルフ (Pocket Battles Orcs vs. Elves)

先日ポケットバトル オークvsエルフというゲームを買ったのだが、付属されていたホビージャパンのルール翻訳が筆舌しがたいほどひどかった。主語と述語が入れ替わってる、勝手に単語を省略してる、図と説明が一致してないなどやりたい放題で、そのルールを読むだけではまともにプレイできないほどである。
それなりに流通しているのを見かけるゲームなので、他にも被害に合われた方もいると思う。そこで自分の備忘録も兼ねて、原文の英語ルールとホビージャパンの日本語ルールを見比べて見つけた間違いをここに正誤表として挙げる。

ホビージャパン翻訳の間違い・ミスの概要

正誤表を載せる前に、ホビージャパン翻訳がどのように間違っている、あるいはまずい翻訳をしているかをはっきりさせておく。
まず最初にまずいのは単純な翻訳ミスである。主語と述語が入れ替わっていたり、関係代名詞の解釈を間違っていたりと単純なミスが多い。
それから派生した問題で、さらにこの翻訳をまずくしているのは、わからない文章を単語を飛ばしたり接続詞をうやむやにして文章の本質が抜けた文章になっていることである。これのために、一見それらしい文章が載せられていても、肝心の筆者の意図が伝わらず、まったく理解できない文章が並んでいることになる*1
最後に、ゲームのルール翻訳者としてもっともしてはいけないミスをしているのが、単一の単語を複数の日本語に翻訳していることである。ボードゲームのルールでは一つの特定のものを指す名詞がしばしば登場し、それが単一のものを指していることがルールの厳密性・わかりやすさのために非常に重要である。それが、この翻訳ルールでは複数の日本語にブレてその場その場で違う日本語として翻訳されており、それらの指しているものが同一かどうかルールを読む人間には全く分からなくなってしまっている*2

総じて言えることは、仕事が非常にずさんで翻訳者以外によるチェックすらまったく行われてないことである。ホビージャパンといえば日本のボードゲーム代理店最大手であるが、このようなクオリティのものを出すのは本当に信じがたい。たしかに主力の5,000円前後のボードゲームに比べるとある程度安価なゲームではあるのだが、だからといってこのような品質の極めて低い翻訳をつけて売っていいというわけではないだろう。私は後日ホビージャパンに連絡を取って抗議させてもらおうと思っている。

正誤表

以下が今現在私が見つけた範囲でのホビージャパン翻訳の間違い・翻訳ミスである。なお、原文の英語ルールは製作元のZ-MAN gamesの以下からダウンロードできる。


非常に見づらいと思いますので、全体を確認したい方は上記googleドキュメントへのURLを参照してください。

もしこの他にも間違いを見つけた人がいたらぜひコメントなどで教えてください。

なぜこのような翻訳になってしまったのかの考察

正誤表を作成する過程で、ある程度翻訳者の実像と、こうなってしまった理由が見えてきた。以下でその推測を挙げて考察したい。

1. 前作のルール翻訳に依存してしまっている

一部の翻訳がまるごとコピペであったように、前作のルールブックをコピーしてしまっている。そのためこのセット向けではない説明などが一部混入している。もしかすると前作と翻訳者が変わっているため、よく理解せずにコピペしたことがこの翻訳の酷さにつながっている可能性がある。

2. このゲームを一度もプレイしたことがない

編成ポイントに関する説明など、このゲームの根幹に関わるルール説明が間違っている。翻訳者は一度もプレイしたことがないか、適当に英語ルールを読んだために間違ったルールでプレイした可能性が高い。

3. 作成された翻訳ルールのチェックなど、社内の体制ができていない

最近発売された世界の七不思議などを見る限り、ホビージャパンの中にまったくそういった組織がないとは考えにくい。しかし、これだけずさんでだれでも一目見ればまずい文章だとわかる翻訳が市場に出回っていることを考えると、少なくともこの翻訳文が社内の正規のチェックを通ったとは考えにくい。

4. 翻訳者の英語の能力が低い。

これももちろん理由の可能性は高いが、それほど大きな要因ではないように思う。実際私も英語の能力はそれほど高くなく、常に辞書とにらめっこしながらルールを翻訳しているし、そうすれば十分にクオリティの高い翻訳はできると思う。

5. 翻訳の基本的な訓練・練習を全く受けてない

まず単一の名詞を複数の日本語に翻訳してしまうという最もしてはいけないことを破っているのが最たることだが、それ以前にまともに元の文章を日本語にできている箇所がほとんどないことも、それを裏付けていると思う。ほとんどの文章が意訳で、ぱっと見で感じた内容を単に日本語にしただけのため、簡単に元の文章の意味が欠如したり、日本語として非常に読みにくくなってしまっている。また、単語の翻訳に関しても、複数ある訳から適切な日本語を選びとる、という基本的なことが全くできていない。

6. 人的・時間的リソースがまともに割かれていない

できた翻訳をチェックしていない、意訳の適当な翻訳、文が抜けている、図があってない、翻訳者が未熟など、この翻訳ルールは根本的に時間的・人的リソースが割かれていないように思う。自分はこの翻訳ルール込みでこのゲームを買ったわけで、amazon.deでおよそ1,200円程度で買えることを考えれば、少なくとも500円程度はこのルールブックに投資したわけだ。それでこの出来は、正直詐欺と言っても言い過ぎではないように思う。

*1:例:原文三ページ七行目のusuallyを飛ばしたことにより、「後方の軍団はしばしば戦闘に参加しません」から「後方の軍団は戦闘に参加しません」となり意味が変わってしまっている

*2:例:翻訳ルール一ページ目の配備ポイントと編成ポイント。これらは原文では同じDeployment pointsである